新天地での生活を始めて、最初のうちは休みになるたびに自転車を走らせていました。
最初に向かったのは、土地の神様ではないかと思った諏訪神社。
知らない土地でしばらく生活させてもらうのだから、まずはご挨拶をしておこう。
そんな気持ちでした。
別の日には御建神社。
途中、新宮神社にも立ち寄りました。
そこへ向かう途中には城跡があり、その近くには小さな神社がぽつんと建っていました。
こういうものは、車で目的地だけを目指していたら見落としてしまうのかもしれません。
自転車だからこそ、
「あれ、何だろう?」
と思ったら、その場で止まれる。
新しい土地を知るには、自転車というのはなかなかいい乗り物です。
そして別の日。
今度は吾妻の滝を見に行こうと思って自転車を走らせました。
……ところが、なぜか古墳にたどり着きました(笑)。
行く予定なんて、まったくありません。
古墳って、こんな場所だったのか
正直に言えば、それまで私は古墳にあまり良いイメージを持っていませんでした。
古墳といえば、お墓。
どちらかというと「死」に近い場所。
わざわざ自分から近づきたい場所ではない。
そんなイメージでした。
ところが、実際に行ってみると、思っていたものと全然違いました。
きれいに整備されていて、どこか垢抜けている。
天気や季節もあったのかもしれませんが、空気まで清々しく感じました。


「古墳って、こんな場所なんだ」
思いがけず、かなり感動しました。
行くつもりもなかった場所へ迷い込んだ結果、自分の中にあった先入観が一つ消えました。
こういうのも、新天地をふらふらする面白さなのかもしれません。
ただ、この古墳とはこれで終わりませんでした(笑)。
その後AIに、
「古墳の敷地内に神社がある」
と教えられたのです。
地図を見ても見つからない。
何度確認してもよく分からない。
だったら行って確かめるしかない。
ということで、次の休み。
今度は、最初は行くつもりすらなかった古墳へ、自分から向かうことになりました(笑)。
展示施設にいた管理の方に聞いてみます。
「この敷地内に神社ってありますか?」
返ってきた答えは、
「ないですよ」
……ないんかい(笑)。
その後AIには、
「ないって言ってるのに、なんでハルシネーションした!」
と、かなり責めました(笑)。
ただ、その管理の方が、古墳から少し離れたところに氏神様があることを教えてくれました。
せっかくここまで来たのだから、そのまま自転車で向かいます。
朱色の立派な門が印象に残る神社でした。
AIの情報は間違っていましたが、結果として知らなかった神社へ行くことになった。
まあ、結果オーライ……なのかもしれません(笑)。
自転車で行けるところにも限界がある
そんなふうに、休みのたびに自転車で近所を回っていました。
神社へ行く。
滝を見る。
行くつもりのなかった古墳へ迷い込む。
また古墳へ行く(笑)。
最初のうちは、それだけでも十分楽しかったんです。
でも、新生活を始めて3週間ほど経つと、自転車で気軽に行ける場所にも限界が出てきます。
もちろん、行きたい場所そのものがなくなったわけではありません。
むしろ、あります。
出雲大社にも行ってみたい。
岡山方面にも行きたい。
鳥取砂丘も見てみたい。
厳島にも行きたいし、しまなみ海道も走ってみたい。
レンタカーを借りれば行けます。
借りようかな、と考えることもあります。
でも、
「事故ったらどうしよう」
「レンタカー代もかかるし」
「ガソリン代もなあ」
と、行かない理由を自分で次々作り始める(笑)。
引きこもりに、自分で加担しています。
考えてみれば、関東にいた頃はほとんどバイク移動でした。
下道だけで片道500kmほど走って、伊勢神宮まで行ったこともあります。
片道500km走ったあとだと、片道100kmくらいの三峯神社が妙に近く感じて、翌週には参拝していました(笑)。
そんな人間が、
「レンタカー事故ったらどうしよう」
です。
環境が変わると、人間も変わるものです。
「一人でいる」のと「一人しかいない」のは違った
そして、仕事も少し落ち着いてくる。
すると、持て余す時間が増えてきました。
その時間が増えてくると、
「自分は今、本当に一人なんだな」
ということが、だんだん身に染みてきました。
関東にいた頃も、一人で過ごすことは多い方でした。
芝居の稽古を真面目にやっていた頃は、毎週のように稽古終わりに飲んでいました。
SNSで生配信もやっていて、たしか全部で100回くらいやったと思います。
その後、人付き合いそのものに疲れてしまい、いろいろなものから距離を置くようになりました。
必要がなければ家から出ない。
かなり引きこもりに近い生活です。
だから、新天地へ来ても、
「まあ、そんなに変わらないだろう」
と思っていました。
実際、引きこもっているという点では、そんなに変わりません(笑)。
むしろ冷蔵庫も洗濯機もないので、関東の自宅にいた頃より外には出ています。
でも、決定的に違うことが一つありました。
気が向いた時に、飲みに誘える人がいない。
関東にいた時だって、しょっちゅう誰かと会っていたわけではありません。
何か月も会わないこともある。
でも、
「久しぶりに飲む?」
と連絡できる相手がいました。
会おうと思えば、会える距離に誰かがいた。
これは大きかった。
新天地では、本当に誰もいません。
新幹線で4時間以上。
「飲みに来いよ」
と言って、本当に来るような強者はそうそういません(笑)。
そこで初めて、
本当の淋しさって、こういうものなのかもしれない
と思いました。
今まで自分が感じていた孤独は、もしかすると「なんちゃって孤独」だったのかもしれません。
一人になりたくて、一人になる。
でも、何かあれば誰かに会える。
それは孤独というより、
自分で確保していたパーソナルスペース
だったんじゃないかと思います。
「一人でいたい」と、
「一人しかいない」は、
似ているようで全然違いました。
「寂しい」と書いてみた
ある日、会社の同僚に、
「飲みに来い」
と送ってみました。
来るわけがありません(笑)。
そしてLINEに、
「寂しい」
と書いてみました。
文字にしてしまうと、不思議なものです。
それまでぼんやりしていたものに、急に輪郭ができてしまう。
「ああ、自分、本当に寂しいんだな」
と余計に実感しました。
心配してくれたのか、同僚が電話を掛けてきてくれました。
ありがたかったです。
……その時だけでしたが(笑)。
もちろん、また「寂しい」と書けば掛けてきてくれるのかもしれません。
でも、50過ぎのおやじから毎回、
「寂しい」
と言われて電話を掛けてくれるおじさんも、そうそういないでしょう(笑)。
忙しく仕事をしている時は平気なんです。
問題は、時間ができた時。
その隙間から、
じわじわと淋しさが入ってきます。
昔、一人暮らしを始めた頃にも、これに似た感覚を味わったことがあります。
詳しく書けば、それだけで別の記事になりそうなので今回はやめておきますが、
「戻ろうと思えば戻れる場所がある」
という感覚は、思っていた以上に大きかったのだと思います。
これじゃいかん、と人を探してみる
さすがに、
「このまま一人で引きこもっているのも違うな」
と思いました。
そこで、新天地でも一人で参加できそうなコミュニティを探してみることにしました。
見つけたのは、演劇系のオンラインコミュニティ。
実際に参加してみると、面白かったです。
地元の集まりに近いものを想像していたのですが、遠方から参加している人もいて少し驚きました。
オンラインなので、考えてみれば当然なのですが(笑)。
画面越しではあります。
でも、人の顔を見ながら話す。
相手の反応を見る。
同じ時間に笑う。
文字だけでやり取りするのとは、やっぱり何かが違います。
うまく説明できませんが、
「ああ、人と話しているな」
という感覚がありました。
しかも、事前連絡なしで、気が向いた時に参加してもいいらしい。
これはありがたい。
私の場合、何かに所属して、
「毎週必ず来てください」
となると、それはそれで重くなってしまいます。
寂しくなったら、また顔を出す。
そのくらいの距離感がちょうどいい。
ただ、できればオンラインだけではなく、
「今日、飲みに行かない?」
と言える相手も欲しい(笑)。
なので、もう少し地元のコミュニティも探してみようと思っています。
SNSで、
「近くの人、誰か会いませんか?」
とやる方法もあるのでしょう。
でも、ニュースなどを見ていると、さすがにそれはちょっと怖い。
若い女性でも何でもありませんが(笑)、それでも最低限の警戒心くらいは持っておこうと思います。
冷蔵庫の代わりはある。でも、人の代わりは難しい
前の記事では、
冷蔵庫がなくてもコンビニがある。
洗濯機がなくてもコインランドリーがある。
足りないものがあれば、その時考えればいい。
そんなことを書きました。
実際、それで生活は何とかなっています。
でも今回、
簡単には代用できないものが一つあることに気づきました。
人です。
一人でいること自体は嫌いではありません。
むしろ好きな方です。
でも、
「一人でいたい」と「一人しかいない」は違う。
これは、新天地へ来なければ分からなかったことかもしれません。
何もない新天地で暮らし始めて、
前回は「物は思ったより少なくても暮らせる」と知りました。
今度は、
人とのつながりは、思っていたより自分の生活の中にあった
ということを知りました。
なくなってみて、初めて分かる。
物も、人も、案外そういうものなのかもしれません。
前回は、
「ないなら、どうする?」
と考えるのが楽しいと書きました。
では、
人とのつながりがないなら、どうする?
次は、それを試してみようと思います。

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